由縁「歴史と伝統」
歴史と伝統
毎年、桜が美しく舞い散るころになると、福光の旧町を御神輿が巡幸する。担ぎ手の男
たちの思い込め新調された法被(はっぴ)を身にまとい、古くからの面影を残す町並みを、朝から日が落ちるまでその重さに耐え、掛声を合わせ、一体となって
町中を練り歩く。その巡幸にあわせ、子供たちの獅子舞、庵屋台からは三味線、笛、太鼓などにあわせ、端唄が響いてくる。
はなやかな絵巻物が目の前で繰り広げられる…。ひと時、タイムスリップでもしたかのような雰囲気に包まれる。200年以上も受け継がれてきた伝統、優美でもあり、そして勇ましい。
クライマックスになると、この御神輿巡幸の勇ましさは最高潮に達する。宮の前に戻ってくると、男たちは「自分たちはまだまだ担げる」というところを神様に見せるために、お宮前を力尽きるまで何度も参道を往復するのである。一番の見せ場「もどいた」である。
重い御神輿を担ぎ、辛いのをがまんし、それでも担ぎ続ける「もどいた」は、見るものにも熱いものがこみ上げてくる。担ぎ手をしている者にとって「もどい
た」をやり遂げた後は、御神輿の重みを体験したもののみが味わえる充実感と連帯感に包まれる。そうして、長い祭りの一日が終わるのである。